「相続した山が売れたら、税金はどのくらいかかるの?」
「山林を売ったら、確定申告をしないといけない?」
山林の売却を考えはじめると、いくらで売れるかと同じくらい気になるのが税金です。山林を持っている間にかかる固定資産税については以前の記事で解説しましたが、今回は「山林を売ったとき」にかかる税金を取り上げます。
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山林の売却で押さえておきたいのは、土地と、そこに生えている木(立木)とで、税金の種類が違うという点です。土地は「譲渡所得」、立木は「山林所得」として、それぞれ別の方法で計算します。また、税金がかかるのは売値そのものではなく、売値から経費などを差し引いた利益の部分です。立木の売却益が小さければ、山林所得の税金はかからないことも少なくありません。
この記事では、個人が山林を売った場合を前提に(法人の場合は法人税の対象になります)、土地と立木それぞれの税金の計算方法、相続した山を売るときのポイント、具体的な計算例、確定申告の流れまでを解説します。
山林を売ったときの税金は、土地の部分と立木の部分に分けて考えます。違いをまとめると、次のとおりです。
どちらも、税金がかかるのは「利益」に対してです。利益とは、売値から、買ったときの費用(取得費)や売るためにかかった費用などを差し引いた金額のことです。売値が300万円だったとしても、300万円すべてに税金がかかるわけではありません。
また、土地と立木をまとめて売る場合は、売値のうち土地がいくら、立木がいくらなのかを分けて計算する必要があります。この内訳によって税額が変わるため、売買契約の段階で金額を分けておくことが大切です(第5章の計算例と第8章で詳しく説明します)。
土地の部分の利益(譲渡所得)は、次の式で計算します。
譲渡所得 = 土地の売値 -(取得費 + 譲渡費用)
先祖代々の山林などで、買ったときの金額が分からない場合は、売値の5%を取得費として計算できます(概算取得費)。たとえば200万円で売った土地なら、取得費は10万円として計算します。
なお、毎年払ってきた固定資産税は、取得費にも譲渡費用にも含まれません。
譲渡所得の税率は、土地を持っていた期間によって変わります。所有期間は、売った年の1月1日時点で数えます。
| 所有期間 | 税率 |
|---|---|
| 5年を超える (長期譲渡所得) | 20.315% (所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%) |
| 5年以下 (短期譲渡所得) | 39.63% (所得税・復興特別所得税30.63%、住民税9%) |
相続した山林の場合、所有期間は亡くなった方が取得した日から数えます。親の代から長く持っていた山林であれば、相続してすぐに売っても長期譲渡所得として扱われるのが一般的です。
反対に、買ったときより安く売って損が出た場合は、譲渡所得に税金はかかりません。ただし、土地の売却で出た損失は、原則として給与などほかの所得と相殺することはできません。
立木を伐採して売ったり、立木のまま売ったりしたときの利益は「山林所得」になります。山林所得は、次の式で計算します。
山林所得 = 立木の収入 - 必要経費 - 特別控除(最高50万円)
必要経費には、植林や下刈り、間伐など木を育てるための費用、管理費、伐採費、売るためにかかった費用などが含まれます。特別控除は最高50万円で、収入から必要経費を引いた金額が50万円に満たない場合は、その金額までとなります。
ただし、山林を取得してから5年以内に伐採したり売ったりした場合は、山林所得ではなく、事業所得か雑所得として扱われます。
何十年も前から持っている山林では、植林や手入れにかかった費用の記録が残っていないことがほとんどです。そこで、売った年の15年前の12月31日以前から持っている山林については、必要経費を概算で計算できる特例があります。2026年に売る場合は、2011年12月31日以前から持っている山林が対象です。
必要経費 =(立木の収入 - 伐採費など売るための費用)× 50% + 伐採費など売るための費用
つまり、売るためにかかった費用を除いた収入の半分を、経費として差し引けるということです。相続した山林は、亡くなった方が持っていた期間も含めて判定します。
山林は、何十年もかけて育てた木を一度に売ることが多く、その年だけ所得が大きくなりがちです。所得税は所得が多いほど税率が上がる仕組みのため、そのまま計算すると税負担が重くなってしまいます。
そこで山林所得には、所得を5分の1にしてから税率をかけ、その税額を5倍に戻す「5分5乗方式」という計算方法が使われます。
所得税 =(課税される山林所得 × 5分の1 × 税率)× 5
たとえば、課税される山林所得が1,000万円の場合、普通の所得と同じように計算すると、所得税は176.4万円になります。5分5乗方式では、5分の1にした200万円に対する税率(10%)で計算するため、所得税は51.25万円で済みます。このほかに、復興特別所得税(所得税額の2.1%)と住民税(一律10%)がかかります。
森林経営計画の認定を受けた森林で、その計画に沿って伐採や売却をした場合は、「森林計画特別控除」によって、さらに所得を減らせる場合があります。期限を区切って延長されてきた制度で、要件も細かいため、使えるかどうかは税務署や税理士に確認してください。
山林を売る方の多くは、親などから山を相続した方です。相続した山林には、計算上の特別なルールがあります。
相続した山林は、亡くなった方が取得した時期と取得費を、そのまま引き継ぎます。そのため、相続して間もなく売った場合でも、土地は長期譲渡所得、立木は山林所得として扱われるのが一般的です。
親の代、祖父母の代から受け継いだ山林では、いくらで買ったのか分からないことも珍しくありません。その場合、土地は売値の5%を取得費とし、立木は概算経費の特例を使って計算できます。
山林を相続したときに相続税を払った方は、相続税の申告期限から3年以内に売ると、払った相続税のうち一定の金額を土地の取得費に上乗せして計算できます(取得費加算の特例)。取得費が増えるぶん利益が小さくなり、譲渡所得の税金が軽くなります。この特例を使うには、確定申告での手続きが必要です。
なお、相続した山林を売るには、先に名義変更(相続登記)を済ませておく必要があります。まだの場合は、売却の準備と並行して進めましょう。
ここまでの内容を、具体的な数字で確認してみましょう。次のような条件で、相続した山林を売ったとします。
この例では、税金の合計は約34.5万円です。売値300万円から、売るための費用30万円と税金約34.5万円を差し引くと、手元に残るのは約235万円になります。
立木の部分に税金がかからなかったのは、概算経費と特別控除で利益がゼロになったためです。このように、立木の売却益がそれほど大きくない場合は、山林所得の税金がかからないことも少なくありません。
一方で、内訳が変われば税額も変わります。仮に同じ300万円をすべて土地の代金として計算すると、土地の譲渡所得が255万円に増え、税金は約51.8万円になります。ただし、内訳は税金を安くするために自由に決められるものではありません。土地と立木それぞれの評価にもとづいた、妥当な金額にする必要があります。
※計算を分かりやすくするため、端数処理や、ほかの所得との関係は考慮していません。
山林を売って利益が出た場合は、売った年の翌年の2月16日から3月15日までに確定申告をします。土地の譲渡所得も立木の山林所得も、ほかの所得とは分けて計算する「分離課税」のため、確定申告書の第三表(分離課税用)を使います。
あわせて、土地については「譲渡所得の内訳書」、立木については「山林所得収支内訳書」を作成して提出します。申告の際は、次のような書類を手元にそろえておくとスムーズです。
また、第7章で紹介する特別控除などの特例は、使った結果として税金がゼロになる場合でも、確定申告をしなければ使えないものがほとんどです。
山林を売ったことによる影響は、その年の所得税だけではありません。
特にご高齢の方が売る場合は、保険料への影響も含めて、売る時期を検討しておくと安心です。
売る相手や売り方によっては、利益から大きな金額を差し引ける特例が使える場合があります。
どちらも、契約前の手続きが必要だったり、買い取る側から発行される証明書が必要だったりと、細かい要件があります。該当しそうな場合は、契約の前に税務署や税理士に相談しておきましょう。自治体による買取りについては、次の記事でも解説しています。
最後に、山林を売る前にやっておきたい準備をまとめます。
最後に、この記事のポイントをまとめます。
山林の売却では、いくらで売れるかと同じくらい、手元にいくら残るかが大切です。山林ねっと.comでは、土地と立木を分けて査定したうえで、売却の進め方をご提案しています。山林の売却をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
※この記事は、2026年10月時点の法令にもとづく一般的な解説です。実際の税額や特例が使えるかどうかは、個別の事情によって異なります。申告の際は、税務署または税理士にご確認ください。