近年、土地活用として山林をソーラー発電所として収入源しにしようという方が増えているというのを耳にされた方もいるのではないでしょうか。収益が期待できる一方で環境面や法規制、地域との関係など様々な課題もあります。本記事では、山林でのソーラーパネル設置について、収益性の期待値、考えられるリスク、そして日本国内の規制の観点から分かりやすく解説します。
ソーラーパネル設置にはパネルや架台、工事費などまとまった初期投資が必要です。産業用太陽光発電(事業用)の場合、初期費用の回収期間は一般的に約8~12年と言われています。
山林の場合も例外ではなく、およそ10年前後で投資回収できるケースが多いのが現状です。例えば、出力50kW程度の小規模発電所でも数千万円規模の初期費用がかかりますが、20年間の売電契約期間内で十分に元が取れる計画が立てられています。ただし山林特有の費用も考慮が必要です。平地や屋根上の設置と比べ、森林の伐採や造成、送電線の引き込みなど追加コストが発生します。
一方で山林や農地は宅地より土地代が安いため、その分コストを抑えられるメリットもあります。結果的な採算は、パネルの発電量や設置コスト、追加工事費を含めた事前シミュレーションで確認することが重要です。
太陽光発電の収益性を左右する売電価格(電力の買取単価)は、国の固定価格買取制度(FIT)によって定められます。FIT開始当初の2012年度は1kWhあたり40円以上という高単価でしたが、その後毎年引き下げられ、2024年度には10〜16円/kWh程度まで低下しました。
例えば事業用(10kW以上)の地上設置型では2024年度は10円/kWh(税抜)、2025年度は8.9円/kWhに設定されています。このように売電単価は10年前と比べて半分以下となっており、年々低下が緩やかになりつつも今後も下落傾向が続く見通しです。
政府目標では、事業用太陽光の買取価格を2025年頃には7円/kWh程度(市場価格並み)まで下げる方針が示されています。
FIT制度は原則20年間の固定単価買取を保証するため、一度契約できれば期間中の収入は安定します。しかし新規案件では前述のように買取価格が低く抑えられており、利益率は以前より縮小しています。また50kW以上の大規模案件では、固定買取(FIT)ではなく市場連動型のFIP制度を選択する場合もあります。
この場合、売電収入は市場価格にプレミアムを加えた変動制となるため、市場価格の変動リスクも考慮する必要があります(後述の「経済リスク」参照)。
太陽光発電の収益モデルには、発電した電気をすべて売る「売電型」と、自社で消費して余剰があれば売電する「自家消費型」があります。近年、FIT価格の低下に対して電気料金の高騰が起きたため、この自家消費型が注目されています。
〇売電型(投資型): 発電した電力を電力会社に買い取ってもらうモデルです。FIT契約を結べば20年間は決まった単価で収入が得られるため、収支計画が立てやすい利点があります。初期投資を回収した後は売電益がそのまま利益になります。ただし近年の新規FIT単価は約9~10円/kWh程度と低いため、大規模で効率的な発電を行わないと十分な利益を出しにくくなっています。
〇自家消費型: 発電した電力を工場や施設など自社内で使うモデルです。電力会社から買う電気代(一般的な法人向け電気料金は20円/kWh前後の場合も)を削減できるため、売電するより経済メリットが大きいことがあります。実際、2021~2023年に燃料価格高騰で電気料金が度重なる値上げとなり、多くの企業が電気代対策に太陽光の自家消費導入を検討しました。自家消費型は余剰電力の扱いが課題ですが、蓄電池を併用したり一部を売電したりすることで対応可能です。また自家消費の場合でも補助金や税制優遇(再生可能エネルギー設備の減税措置など)が受けられるケースもあります。
まとめ: 売電型は長期安定収入を得る投資モデル、自家消費型は電気代削減による実利を得るモデルと言えます。山林に大規模設備を作る場合は基本的に売電型になりますが、工場隣接地の山林に設置して自社工場の電力として消費しつつ余剰を売電する、といったハイブリッド型も考えられます。いずれにせよ、電力単価の動向や自社の電力需要を見極めて最適なモデルを選ぶことが重要です。
実際、岡山県赤磐市では82ヘクタールの山林にメガソーラー(太陽光パネル32万枚)を設置したところ、後に山の斜面で土砂崩れが発生し、ふもとの水田が土砂で埋まる被害が起きました。
また豪雨や台風などの自然災害時には、パネルが土砂にのみ込まれたり強風で飛ばされたりする事故も報告されています。西日本豪雨や大型台風に見舞われた2018年には、全国で太陽光パネルの損傷・流出事故が少なくとも57件確認されています。さらに、森林伐採を伴う開発は生態系への影響も無視できません。山林を切り開いてしまうことで動植物の生息環境が失われ、生物多様性の損失につながります。「環境に優しい」とされる再生エネ事業でも、山を削り水を汚してまで行えば本末転倒だと指摘する声もあります。
また景観面でも、緑豊かな山の斜面に人工物である黒いパネル群が出現することで「自然の景観になじまない」との批判があります。
地域によっては観光資源である美しい山並みが損なわれるとして懸念される場合もあります。環境リスクへの対策としては、事前の地質調査や適切な排水設備の設置、法面の補強工事などで土砂災害リスクを低減することが求められます。また必要最小限の森林伐採に留め、周辺環境への影響評価を十分に行うことが重要です。
山林で太陽光発電所を設置するには、様々な法令の遵守と行政手続きが必要です。まず、土地そのものに関わる規制として森林法があります。対象の山林が自治体の地域森林計画区域に含まれる場合、1ヘクタール以上の開発を行うには知事の「林地開発許可」が必要です。
また山林が土砂災害警戒区域に指定されている場合や、水源涵養や防災のための保安林に指定されている場合には、開発自体が厳しく制限されたり別途許可が必要となったりします。
たとえ自分の所有地でも、こうした法令の制限下にある森林では行政に確認し所定の手続きを踏む必要があります。さらに、国の再生可能エネルギー政策の変更も法的リスクとなりえます。例えばFIT制度の認定基準が強化されれば、新規参入のハードルが上がります。また2024年の法改正では、一定規模以上の再エネ発電事業者に対し近隣住民への事前説明会開催が義務づけられました。
これは太陽光や風力発電を巡る地域トラブル増加を受けた措置で、説明会を開かないとFIT/FIPの認定が受けられなくなります。加えて、事業者が関連法規に違反した場合には、経済産業省がFIT/ FIPによる売電収入の支払いを一時停止できる制度も導入されています。
実際、2024年4月には森林法に違反して開発を進めていた太陽光発電9案件に対し、国がFIT支払い停止の処分を行いました。このように法令順守を怠れば事業継続が困難になるリスクがあるのです。その他にも、山林を宅地や雑種地に地目変更する際の都市計画法や建築基準法上の手続き、農地から転用する場合の農地転用許可など、個別のケースに応じた許認可が必要です。法規制は今後さらに強化・変更される可能性もあり、事業者にとっては最新の動向をチェックし、コンプライアンス(法令順守)を徹底することが欠かせません。
投資ビジネスである以上、採算が合わなくなるリスクにも注意が必要です。まず、想定していた発電量や売電収入を下回るリスクがあります。山林は日照条件が場所によって異なり、周囲の木々の影になると発電ロスが生じます。またパネル自体も経年で出力が少しずつ低下しますし、機器の故障や劣化、事故や災害によって一部設備が破損すれば、その修理・交換費用やその間の売電停止による損失が発生します。
このような事態に備えて保険に加入することもできますが、保険料や過剰なメンテナンスサービスにコストをかけすぎると収支を圧迫するため、バランスが大切です。
次に維持管理コストです。山間部では雑草や樹木の生長が早く、こまめな草刈りや剪定が欠かせません。落ち葉がパネルに積もれば発電効率が落ちますし、放置すれば機器の故障原因にもなります。遠隔地の山林に設置した場合、自力での管理が難しければ専門業者に委託する必要があり、その費用も見込まねばなりません。また山林を開発すると土地の税区分が「山林」から「雑種地」などに変わり、固定資産税が大幅に増える点にも注意が必要です 。
山林は本来課税額が低いですが、発電設備を設置すると一転して高い税率が適用されるため、毎年のランニングコストに影響します。さらに、電力市場の変動リスクも経済面で無視できません。FIT期間中は決まった単価で売れるものの、期間終了後や市場連動型のFIPの場合は、電気の卸売市場価格に収入が左右されます。電力需要が低迷する春秋の昼間などは卸価格が下がり、将来的には売電価格が一層低下する可能性があります。
逆に燃料価格高騰時には市場価格が上がることもありますが、そうした場合は出力抑制(発電量の強制カット)の頻度も増える恐れがあります。実際に一部地域(例:九州電力管内など)では太陽光の大量導入により需要超過が懸念され、**晴天時に送電を止める「出力抑制」**が度々実行されています。
出力抑制が行われるとその間の売電収入はゼロになってしまうため、収益計画に影響します。経済リスクへの対策として、事前に悲観ケースも織り込んだ収支シミュレーションを行うこと、設備投資に際しては借入金の利子や返済計画も含め無理のない計画にすることが重要です。また発電効率を上げるための定期点検や、必要最低限の保険加入によるリスクヘッジも有効でしょう。
山林開発を伴う太陽光発電事業は、その地域の住民や自治体との関係も重要です。地元の理解や協力が得られない場合、計画段階から強い反対運動に直面し、事業が停滞・中止に追い込まれるリスクがあります。特に「土砂災害の不安」「景観破壊」「環境破壊」といった懸念は住民にとって切実であり、しばしば反対理由に挙げられます。奈良県平群町では、山林開発型のメガソーラー計画に対し「土砂災害の危険がある」として住民約1,000人が事業差し止めを求め集団訴訟を起こしました。
また全国調査でも、都道府県の8割近くで太陽光発電を巡るトラブルが発生しており、内容は「土砂災害」が最も多く、「景観の悪化」「自然破壊」がそれに続くという結果が出ています。
また、地域にとって太陽光発電所がどの程度メリットをもたらすかも問題となります。太陽光発電所は運転にあまり人手を必要としないため地元に雇用を生み出さない傾向があります。固定資産税収は多少入るものの、原発や火力発電所のように大きな税収や産業振興効果が見込めないため、「利益は外部の事業者に取られ、地元にはリスクだけが残る」という不満を招きやすい側面もあります。
こうした不信感から反対運動が起きたり、説明会で紛糾したりするケースもあるのです。社会的リスクへの対策として、事業計画の段階から地域住民への丁寧な説明と対話を行い、懸念点に対する対策(防災工事や景観緑化など)を示すことが不可欠です。前述のように法的にも住民説明会が義務化されていますが、単なる形式でなく真摯なコミュニケーションが重要です。また地域への経済的な還元策(例えば地元企業の優先起用や地域振興基金への拠出等)を講じることで、理解を得やすくなるでしょう。
再生可能エネルギー特別措置法(通称:FIT法)は、太陽光発電の固定価格買取制度を定める国の法律です。これにより発電事業者は経産省からFIT認定を受け、電力会社に一定価格での買い取りを20年間保証してもらう仕組みになっています。2022年度からは大規模事業向けに**フィードイン・プレミアム(FIP)**制度も導入され、市場価格連動型の支援策が併用されています。
また2024年の法改正では先述したように住民説明会の義務化やFIT支払い停止措置が盛り込まれ、地域環境との調和や事業者の法令順守を促す内容となっています。
環境面では、環境影響評価法(環境アセスメント法)や各自治体の環境影響評価条例が関係します。国の環境影響評価法では太陽光発電は対象事業に明記されていませんが、出力や面積が極めて大きいプロジェクトでは自主的に環境影響評価を行ったり、自治体が独自の条例でアセスメントを求める場合があります。特に森林伐採を伴うメガソーラーでは、生態系や景観への配慮から事前調査と報告が事実上必要とされています(例:長野県ではメガソーラーに県環境影響評価制度の適用を検討)。
これらの制度により、希少動植物への影響や土壌流出対策について事前にチェックを受けることになります。土地利用規制としては、前述の森林法による開発許可のほか、農地転用の場合の農地法、景勝地での開発に関する景観法、都市計画区域内で開発行為を行う際の都市計画法などが関わります。例えば景観法に基づく届出が必要な地域では、太陽光パネルの配置や色彩について行政から指導を受けることがあります。
また、開発行為に伴い出る産業廃棄物(土木残土や伐採木など)の処理については廃棄物処理法の遵守も求められます。太陽光パネルそのものについても、将来的な大量廃棄が懸念されており、国は太陽光パネルのリサイクル・適正処理のルール整備を進めています。2022年度からはFIT認定事業者に対しパネル処分費用の積立義務が導入され、運転期間中に撤去・処理費用を外部預託しておく仕組みが始まりました。
これは事業終了後にパネルが放置される事態を防ぐ目的があります。このように国レベルでは再エネ普及と環境保護のバランスを取るため、売電制度から環境・廃棄対策まで幅広い法律・制度が整備されています。事業者は該当する法令をすべて遵守し、必要な許認可を確実に取得することが求められます。
2023年の記録的な輸出実績は、日本の林業界にとって大きな転換点となりました。円安効果や中国での需要拡大といった外部要因に加え、政府の支援策や業界の取り組みが奏功した結果と言えます。
このような木材輸出の活況を受けて、山林投資への関心も高まっています。山林ねっと.comでは、山林の購入検討から輸出ビジネスの展開まで、専門スタッフが一貫してサポートいたします。
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※本記事で使用したデータは財務省「貿易統計」(2023年速報値)、農林水産省「木材需給表」等の公式統計に基づいています。最新の情報は各関係機関の公式発表をご確認ください。