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山林所有者が知っておきたい相続・承継で失敗しないための完全ガイド

少子高齢化と地価上昇の影響で、山林をめぐる相続問題はかつてないほど複雑化しています。相続税の負担増や共有名義による管理の混乱、二次相続時の揉め事など、予期せぬトラブルが発生しやすいのが山林です。

本稿では、相続前から相続後までの流れを「評価」「申告」「承継」「管理」という4つの視点で整理し、安心して次世代へ引き継ぐための具体的なノウハウをお伝えします。

1. 相続前の準備(1):山林の現況評価と共有者の把握

相続対策を始める第一歩は、まず「何を」「誰と」相続するのかを明確にすることです。登記簿謄本を取得し、地積・地目・保安林指定や特別保全地域の有無を確認。次に、現地踏査で樹齢、植生の状態、アクセス道路や水利状況といった管理コストに直結する要素を調査します。これらの情報をもとに評価士に依頼し、林地及び立木の評価額を把握しておきましょう。

同時に、共有者(法定相続人)の範囲を正確に洗い出します。配偶者や子どもに加え、被相続人に養子がいる、前妻・前夫の子がいるといったケースでは相続人が増え、分割協議が難航しやすくなります。相続人の人数が多いほど申告書類や登記手続きの負担が増えるため、承継ルートをあらかじめ検討しておくことが肝要です。

2. 相続前の準備(2):評価額を適正化する方法

相続税の課税対象となる評価額は、登記簿に記載の面積や地目のほか、用途制限や保安林指定の有無によって大きく変動します。特別緑地保全地区内の山林は、固定資産税評価額から80%控除されるのが原則です。

さらに、森林経営計画を策定した山林(特定計画山林)であれば、評価額に95%を乗ずる「5%減額」の特例が利用できます。

これらの制度を適用するには、現地が各要件を満たしているかを厳密に確認し、事前に市町村長等の認定を受ける必要があります。

手続きや書類作成は専門家(税理士や林業コンサルタント)へ依頼し、適用漏れや書類不備を防ぎましょう。

3. 相続税・贈与税の基礎知識と特例制度

相続税には、法定相続人の人数に応じて基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人)が設定されています。これを超えた課税遺産総額に対し、10~55%の累進税率が適用される仕組みです。山林単独の相続では、仮に課税価格が4,000万円、相続人が妻と子2人の場合、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円。課税財産が控除額以下であれば、実質的に相続税はかかりません。

一方で、相続税・贈与税の納税を猶予・免除する「山林承継特例」が存在します。被相続人が特定森林経営計画を策定した山林を相続した「林業経営相続人」が、そのまま山林経営を継続する場合、課税価格の80%に相当する相続税が猶予され、さらに相続人の死亡時には免除される制度です(国税庁国税庁)

猶予手続きを行うには、相続税申告書への届出や年間報告が必要となるため、申告期限までに速やかに専門家に相談し、手続きを進めましょう。

4. 承継方法の選択肢(1):遺言書による指定と信託活用

相続人同士の揉め事を避けるには、被相続人の意思を明確に示すことが不可欠です。自筆証書遺言や公正証書遺言で山林を指定相続分で承継させる方法は代表的ですが、遺留分(一定割合以上の相続分を保障する権利)との調整が必要です。近年は「信託」を活用し、山林管理と収益処分を信託会社に委託する事例も増えています。信託を用いれば、受益権の分割で相続分を調整したり、管理受託者による専門的な運営が可能になるメリットがあります。

5. 承継方法の選択肢(2):共有→分割/共有継続それぞれのメリット・デメリット

遺言や信託がない場合、複数人で「共有」名義となった山林の承継が発生します。共有のまま運用を続けると、管理方針や費用負担を巡る齟齬が生じやすい一方、分割すると面積が細分化し過ぎて管理効率が低下する恐れがあります。代替案としては、共有者のうち一人が買い取り、他の共有者に金銭を分配する「換価分割」や、土地の一部(例えば林道や集材場部分)を切り分け相続人間で共有し、山林本体は一人が取得する「区分分割」などがあります。実現には測量や評価の準備が必要ですが、円滑な承継に繋がる方法として検討価値があります。

6. 家族間で揉めないためのコミュニケーション術

円満な承継を実現するには、相続人間で早い段階から情報を共有し、意向確認を行うことが重要です。専門家を交えた相続対策セミナーやワークショップを開催し、各自の希望や不安を可視化すると、漠然とした遠慮や誤解が減ります。特に「管理コスト」「収益配分」「将来運用ビジョン」を共有しておくと、承継後のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

7. 税理士・司法書士・林業コンサル

円満な承継を実現するには、相続人間で早い段階から情報を共有し、意向確認を行うことが重要です。専門家を交えた相続対策セミナーやワークショップを開催し、各自の希望や不安を可視化すると、漠然とした遠慮や誤解が減ります。特に「管理コスト」「収益配分」「将来運用ビジョン」を共有しておくと、承継後のトラブルを未然に防ぎやすくなります。

8. 管理体制の引き継ぎと運用プラン

承継が完了したら、速やかに現行の管理体制を棚卸し、引き継ぎを行いましょう。造林・育林スケジュール、委託業者との契約状況、補助金申請状況などを一元管理した「山林承継台帳」を作成すると、情報の抜け落ちや二重発注などのミスを防げます。加えて、中長期的な収益見通しを立て、評価減特例や納税猶予といった制度を最大限活用しながら、森林の健康維持と資産価値向上を図る運用プランをアップデートしましょう。

まとめ:安心して次世代に山林を残すためのチェックリスト

  1. 現況評価の実施:地積・地目・保安林指定の確認と専門家による評価依頼

  2. 共有者の把握と対話:「誰と」「どのように」承継するかを明確化

  3. 評価減・納税猶予の特例適用:森林経営計画、保全指定による控除・猶予手続きの完了(20~30%控除、5%減額、80%猶予)農林水産省国税庁

  4. 承継方法の選択:遺言・信託・区分分割などの手段を比較検討

  5. 専門家体制の整備:税理士・司法書士・林業コンサルタントとの連携体制の確立

  6. 管理体制の引き継ぎ:契約状況や補助金申請状況を含めた承継台帳の作成

  7. 長期運用プランの策定:収益化モデルと維持コストのバランスを検証

これらのステップを踏むことで、山林を単なる「相続財産」ではなく、「未来への資産」として次世代へスムーズに引き継ぐことが可能になります。適切な準備と制度活用、円滑なコミュニケーションで、大切な森林を守り育てていきましょう。

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